ここでは、総二階建ての耐震性能と、検討すべき地震対策について紹介します。
総二階とは、建物を上から見たときに、1階と2階の形がほぼ同じで、上下が揃っている構造の住宅を指します。この用語は、建築基準法などで定められている正式な用語ではなく、あくまで一般の方にわかりやすく伝えるために使われている表現です。そのため、建築に携わる現場では通じるものの、法律文書などでは使用されないことがあります。
一方で、1階よりも2階の床面積が少ない住宅は「部分二階」と呼ばれます。これは、例えば2階の一部だけが部屋になっていて、残りが吹き抜けやバルコニーになっているような住宅です。
総二階の大きな特徴は、上下の壁や柱の位置が揃っているため、構造的に安定しやすく、耐震性の確保にも有利になるという点です。そのため、耐震性を重視する工務店にとって取り入れやすい構造といえます。特にガレージハウスや部分共有型の二世帯住宅においては、敷地を無駄なく使えることから、この形がよく採用されています。
総二階建ての住宅は、耐震性能の面で非常に有利とされています。その理由のひとつが1階と2階の形状がほぼ同じである点にあります。上下階の壁や柱の配置が揃いやすく、それによって地震の揺れで生じた力を均等に分散し、建物全体でその力を受け止めやすくなるのです。特に、2階に加わった地震の揺れがそのまま1階へスムーズに伝わることで、部分的な損傷を避け、構造の安定性を保つ助けとなります。
また、総二階構造では「通し柱」の設置がしやすいという利点もあります。通し柱とは、木造住宅において土台から2階の屋根近くまで一本で通った柱のことで、上下階を構造的に一体化させる働きを持ちます。通し柱があることで、上下階がバラバラに揺れるのではなく一体となって地震に抵抗する構造となり、いわゆる「腰砕け」と呼ばれる下階の崩壊を防ぐ効果が期待できます。
ただし、総二階であれば常に高い耐震性が得られるというわけではありません。たとえば、大きな窓を1階に設けて壁量が不足したり、吹き抜けがあることで上下の構造が不均衡になったりすれば、耐震性能は大きく低下します。つまり、総二階という構造の形だけに頼るのではなく、建物ごとの設計条件や間取り、開口部の配置など、さまざまな要素を慎重に考慮しながら個別に耐震対策を講じることが求められます。
総二階建ての住宅において、地震に強い家を実現するために、制震ダンパーの導入は効果的な手法といえます。特に耐震性に優れるとされる総二階構造でも、大きな開口部(窓や吹き抜け)を設けた場合には、揺れによる影響が建物全体に偏ってしまい、ダメージを受けやすくなることがあります。こうした設計上の不利な条件を緩和する手段として、制震ダンパーは大きな役割を果たします。
制震ダンパーは、ゴム、金属、オイルなどを利用して、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収し、構造体の変形や損傷を抑えます。耐震構造に加えて導入することで、大地震だけでなく、繰り返し発生する余震などにも効果が持続します。
吹き抜けや壁の少ない開放的な間取りを取り入れた場合、揺れによる影響を受けやすくなります。このようなケースで制震ダンパーを戦略的に配置することで、弱点を補うことができるでしょう。さらに制震ダンパーは、免震構造よりも費用負担が軽く、戸建住宅に導入しやすいという利点もあります。また、新築時だけでなく、リフォームでも対応可能な製品も存在するため、既存住宅の耐震補強にも柔軟に対応できます。
すべての制震ダンパーが後付け可能というわけではなく、中には新築時にしか施工できないタイプもあります。また設置するダンパーの数が増えるほど、コストも上昇するため、コストと効果のバランスを見極めた設計提案が必要です。製品によって性能や対応範囲に差があるため、建物の構造設計に適した制震ダンパーを選定し、あらかじめ設置環境との適合性を確認したうえで顧客に提案することが求められます。
制震ダンパーは、総二階建て住宅における耐震性の向上において効果的な選択肢です。地震による構造体への負担を軽減し、長期的な建物の耐久性を確保する上で大きな効果が期待できます。設計段階からダンパーの位置や種類を検討し、耐震構造との相乗効果を最大限に引き出すことが、工務店にとって信頼される家づくりにつながるでしょう。
「制震ダンパーは種類が多くて、何を選んだら良いか分からない…」という方のために、手軽に取り付けられる「施工が簡単な制震ダンパー」や、安全性が高い「在来工法を強固にする制震ダンパー」、販売実績がある「知名度が高い制震ダンパー」をご紹介。導入時は、施工性やダンパー本体のサイズ、住宅との相性も確認しましょう。
・40坪、最短2時間で設置完了
・120年(※1)の品質保証があるためメンテナンス不要
・リフォーム、後付け、新築、に対応尾可能
価格 | 要問合せ |
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サイズ | 55mm×245mm×145mm |
設置本数 | 8本~ |
施工期間 | 1.5~2時間 |
・2×4工法にも取り付け可
・タスキと筋交いと同フレームへ設置可能
・新築のみ対応可能
価格 | 約60万円/40坪 |
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サイズ | 要問合せ |
設置本数 | 要問合せ |
施工期間 | 要問合せ |
・販促ツールでの工務店フォロー
・無料のシミュレーションソフトを提供
・新築に対応可能。(リフォーム・後付けは要問合せ)
価格 | 要問合せ |
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サイズ | 要問合せ |
設置本数 | 4ヵ所/約42坪以下 |
施工期間 | 約2時間/1棟あたり |
(*1):(株)トキワシステムが販売する「αダンパーExⅡ」製品に関して保証するものです。設計施工マニュアルに従った設置で、保証期間内に故障をした場合に限ります。無償修理、有償修理にかかわらず、修理が必要と判断される場合、本製品の設置および取り外し、再設置費用については保証対象外となります。
参照元:トキワシステム公式HP(https://www.tokiwa-system.com/hosho/)
【選定基準】
2022年6月1日調査時点において、「制震ダンパー」「制震装置」「制震システム」でGoogle検索して表示される全ページおよび「一般社団法人
日本免震構造協会」公式サイトに社名が掲載されている中から、木造建築物を対象に制震機能のある装置をリリースし、「実績、実験結果、制震材の数的情報ページがある製品」という条件をクリアしたメーカーを3社選出(大手ハウスメーカー標準採用の独自開発製品を除く)。
下記に「素材別・制震ダンパー比較表」をご用意しました。技術担当者や決裁者など社内理解を得る際や、稟議書の添付資料としてご活用ください。