住宅資材の値上げや納期遅れが、家づくりの大きな不安材料になっています。その背景のひとつとして注目されているのが、原油やナフサをはじめとする石油化学原料の供給不安です。
TOTOは2026年4月、中東情勢の緊迫化やホルムズ海峡周辺の通航制限などにより、原油・ナフサをはじめとする石油化学基礎原料の供給環境が急速に悪化していると発表しました。
その後、TOTOはシステムバス・ユニットバスについて一時的に新規受注を見合わせましたが、4月20日から段階的に新規受注を再開する方針を示しました。通常通り生産・出荷は継続しており、すでに納期回答済みの注文は予定通り出荷するとしています。
- 参照元:TOTO「中東地域の情勢悪化に伴う製品供給への影響について」(https://jp.toto.com/importantnews/info20260410/)
- 参照元:TOTO「第3信 中東地域の情勢悪化に伴う製品供給への影響について」(https://jp.toto.com/importantnews/info20260415/)
ナフサなどの石油化学原料の供給不安は、住宅設備だけに関わる話ではありません。断熱材、配管材、塗料、接着剤、樹脂製品など、家づくりのいろいろな場所に石油由来の素材が使われているためです。
こうした状況で大切なのは、ただ「安く建てる」ことではありません。予算が厳しくなる時期だからこそ、削ってもよいものと、できれば削らない方がよいものを分けて考える必要があります。
ナフサショックとは?住宅業界に関係する理由
ナフサは、原油から作られる石油化学製品のもとになる原料です。プラスチック、樹脂、合成ゴム、有機溶剤など、さまざまな素材の出発点になります。
住宅でいえば、断熱材、配管材、内装材、塗料、接着剤、住宅設備の部材などに関係します。普段はあまり意識しませんが、家の中には石油由来の素材が多く使われています。
そのため、ナフサなどの石油化学原料の供給が不安定になると、住宅に使う材料の価格や納期にも影響が出ることがあります。特に、石油由来の材料を多く使う商品では、原材料の値上がりや調達の遅れが、住宅会社や工務店の見積もり、工事スケジュールに反映されやすくなります。
経済産業省も、ナフサを原料とする有機溶剤や塗料など一部の製品について、通常時を上回る購入や一時的な品切れが発生していると説明しています。また、シンナー、塗料などの溶剤、住宅資材について、安定的な取り扱いと情報提供をホームセンター業界に要請しています。
参照元:経済産業省「中東情勢等を踏まえた溶剤等のホームセンターでの流通等について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/jyutaku/tyuto_ryutu.html)
つまりナフサショックは、遠い国際情勢のニュースに見えて、実際には家づくりの費用や工期に関わる話なのです。
このセクションのまとめ
- ナフサは、プラスチックや樹脂などのもとになる原料
- 住宅では、断熱材・配管材・塗料・接着剤・設備部材などに関係する
- ナフサなどの供給不安は、建築費や納期に影響する可能性がある
- 家づくりを考えている人にとって、無関係なニュースではない
住宅で影響を受けやすい建材・設備
ナフサなどの石油化学原料の供給不安で影響を受けやすいものとして、まず考えられるのが断熱材です。
たとえばカネカは、押出法ポリスチレンフォーム「カネライトフォーム」について、2026年4月1日出荷分から40%の値上げを発表しました。理由として、中東情勢の悪化によるホルムズ海峡周辺の海上輸送環境の不安定化、原油や石油製品などの供給への影響、原材料費やエネルギーコストの上昇を挙げています。
参照元:カネカ「押出法ポリスチレンフォームの価格改定について」(https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2026/nr2603195.html)
断熱材は、家の快適さや光熱費に関わる大切な材料です。価格が上がったり、手に入りにくくなったりすれば、見積もりや工事の進み方にも影響します。
配管材などに使われる塩化ビニル樹脂、いわゆる塩ビも影響を受けています。信越化学工業は、国内向けの塩化ビニル樹脂について、2026年4月1日納入分から1kgあたり30円以上の値上げを実施すると発表しました。
同社の発表では、イランによるホルムズ海峡の封鎖により、中東地域からの原油・石油製品などの供給に大きな影響が生じていると説明されています。塩ビの原料であるエチレン価格の急騰や、調達先からの数量制限、減産も理由として挙げられています。
参照元:信越化学工業「塩化ビニル樹脂の値上げについて」(https://www.shinetsu.co.jp/jp/news/news-release/%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%83%93%E3%83%8B%E3%83%AB%E6%A8%B9%E8%84%82%E3%81%AE%E5%80%A4%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6-17/)
さらに、塗料や接着剤、シンナーなどの溶剤も無関係ではありません。住宅の現場では、外壁、内装、設備の施工など、見えにくいところでこうした材料が使われています。
住宅設備にも影響は出ます。システムバスやユニットバスのように、多くの部材を組み合わせて作る商品では、ひとつの材料不足が納期全体に影響することがあります。
家づくりでは、ひとつの設備や建材だけでなく、たくさんの部材がつながっています。そのため、一部の材料が足りないだけでも、工事全体に影響が広がることがあります。
このセクションのまとめ
- 断熱材、配管材、塗料、接着剤などは影響を受けやすい
- システムバスやユニットバスなどの住宅設備にも影響が出る場合がある
- 住宅は多くの部材でできているため、一部の不足が工期全体に響くことがある
- 見積もりや納期は、早めに住宅会社へ確認しておきたい
家づくりで起こりやすい3つの変化
ナフサなどの石油化学原料の供給不安が続くと、家づくりでは主に3つの変化が起こりやすくなります。
建築費の上昇
ひとつ目は、建築費の上昇です。
断熱材、配管材、塗料、接着剤、設備部材などの価格が上がれば、家全体の見積もりにも影響します。ひとつひとつの値上げは小さく見えても、住宅は多くの部材を使うため、積み重なると負担は大きくなります。
納期の遅れ
ふたつ目は、納期の遅れです。
必要な部材が予定通りに入らなければ、工事の順番を変えたり、着工や引き渡しの時期を調整したりする必要が出てきます。特に、設備や建材の入荷待ちが発生すると、工事全体のスケジュールに影響することがあります。
仕様変更
みっつ目は、仕様変更です。
希望していた設備や建材が入りにくくなった場合、別の商品を選ぶことがあります。キッチン、浴室、トイレ、断熱材、内装材など、選び直しが必要になる場面も考えられます。
ただし、ここで焦ってすべてを削るのはおすすめできません。家づくりには、後から変えやすいものと、後から変えにくいものがあるからです。
このセクションのまとめ
- 起こりやすいのは、建築費の上昇・納期遅れ・仕様変更
- 価格が上がると、住宅全体の予算に影響しやすい
- 設備や建材が入らないと、工期がずれることもある
- 焦って削る前に、何を優先するかを整理することが大切
建築費が上がる時代に、削っていいもの・削ってはいけないもの
建築費が上がると、まず考えるのはコストダウンです。これは自然なことです。予算には限りがあり、すべてを理想通りに選べるとは限りません。
ただ、削る順番は慎重に考えたいところです。
たとえば、壁紙の種類、照明のデザイン、キッチンや浴室の細かなグレードは、比較的あとから見直しやすい部分です。もちろん交換には費用がかかりますが、暮らしながら変える選択肢があります。
一方で、構造、断熱、地震対策のような家の内側に関わる性能は、完成後に変えるのが簡単ではありません。壁を壊したり、工事範囲が大きくなったりすることもあります。
特に地震対策は、日本で家を建てるうえで後回しにしにくい部分です。見た目には分かりにくい性能ですが、いざという時の安心感に関わります。
資材高騰の時期こそ、「見えるところを豪華にするか」だけでなく、「見えないところをどこまで守るか」を考えることが大切です。
内装や設備をすべて最高グレードにする必要はありません。けれど、家の土台になる性能まで削ってしまうと、あとから取り戻しにくくなります。
このセクションのまとめ
- コストダウン自体は悪いことではない
- 壁紙や照明、設備の細かなグレードは後から見直しやすい
- 構造、断熱、地震対策は完成後に変えにくい
- 予算を削る時は「後から変えられるか」で優先順位を考えたい
ナフサショックの今こそ、地震後も住み続けられる家を考える
ナフサなどの石油化学原料の供給不安による資材高騰は、家を建てる時だけの問題ではありません。
もし大きな地震で外壁や内装、設備に被害が出た場合、補修に使う塗料、接着剤、配管材、樹脂部品などにも石油化学由来の素材が関係します。資材価格が不安定な時期は、地震後に「直す費用」や「直すまでの期間」も読みづらくなる可能性があります。
もちろん、どんな家でも地震の被害をゼロにすることはできません。それでも、建てる段階で揺れへの備えを考えておけば、建物の条件や製品の設置計画によっては、地震時の損傷を抑える一助になる場合があります。
ここで選択肢のひとつになるのが、制震ダンパーです。
耐震は、建物を強くして倒壊しにくくする考え方です。一方、制震は、建物に伝わる揺れのエネルギーを吸収し、揺れや損傷を抑えることを目指す考え方です。
どちらか一方だけで考えるのではなく、耐震性能を確保したうえで、揺れを抑える工夫を加える。これが、地震後も住み続けやすい家づくりにつながります。
資材が高い時期ほど、「壊れたら直せばいい」と考えにくくなります。だからこそ、最初から損傷を抑えるという視点を持っておくことが大切です。
このセクションのまとめ
- 資材高騰は、建てる時だけでなく補修時にも影響する可能性がある
- 地震後の修繕費や工期も、家づくりのリスクとして考えたい
- 耐震は倒壊を防ぐ考え方、制震は揺れを抑える考え方
- 地震後も住み続けやすい家にするには、建てる前の備えが大切
制震ダンパーを検討するなら、価格だけで選ばない
制震ダンパーを検討する時は、本体価格だけを見て判断しないことが大切です。
制震ダンパーの導入には、本体費用だけでなく、副材費、人件費、配達コストなどがかかる場合があります。大型のダンパーは設置に複数人が必要になることもあり、小型のダンパーでも設置台数によって総額が変わります。
また、断熱材や筋かいとの相性も見ておきたいポイントです。
制震ダンパーを設置する場所によっては、断熱材に干渉したり、施工に手間がかかったりすることがあります。施工性のよい製品を選べば、現場の負担を抑えやすくなります。
さらに、制震ダンパーは新築なら基本的に検討しやすい一方で、リフォームや増築では導入できる製品が限られる場合があります。古い住宅では、先に耐震診断が必要になるケースもあります。
資材価格が上がっている時期だからこそ、「安いか高いか」だけではなく、次のような点を確認しておきましょう。
- 断熱材や筋かいに干渉しにくいか
- 施工に何人必要か
- 1棟あたり何台設置する必要があるか
- 副材費や配達費まで含めた総額はいくらか
- 新築だけでなくリフォームにも対応しているか
- メーカー側で配置計画を出してくれるか
制震ダンパーは、ただ取り付ければよいものではありません。建物に合った位置に設置して、はじめて本来の役割を発揮しやすくなります。
予算が気になる時ほど、初期費用だけでなく、施工のしやすさ、必要な台数、将来のメンテナンスまで含めて比べることが大切です。
このセクションのまとめ
- 制震ダンパーは本体価格だけで判断しない
- 副材費、人件費、配達費まで含めた総額を見る
- 断熱材や筋かいとの相性、施工性も確認したい
- 新築かリフォームかによって、選べる製品が変わることがある
- 配置計画まで相談できるメーカーかどうかも大切
FAQ:ナフサショックと家づくりでよくある質問
ナフサショックで住宅価格はどのくらい上がりますか?
住宅価格がどのくらい上がるかは、建てる地域、住宅会社、使う建材や設備によって変わります。
ナフサなどの供給不安の影響を受けやすいのは、断熱材、配管材、塗料、接着剤、樹脂製品、住宅設備などです。これらの価格が上がると、住宅全体の見積もりにも影響する可能性があります。
ただし、すべての住宅で同じように値上がりするわけではありません。まずは、見積もりに含まれる建材や設備の価格が今後変わる可能性があるか、住宅会社に確認しておくと安心です。
今すぐ契約した方がいいですか?
価格上昇が不安だからといって、急いで契約する必要はありません。ただし、見積もりの有効期限や、契約後に価格が変わる可能性は確認しておくべきです。
特に、設備や建材の納期が読みにくい時期は、契約時点では選べた商品が、着工時には変更になることもあります。契約前に、価格変更や仕様変更が起きた場合の扱いを聞いておきましょう。
ナフサショックの影響を受けにくい家づくりはありますか?
完全に影響を避けることは難しいです。住宅には多くの石油由来の材料が使われているためです。
ただし、影響を小さくするための工夫はあります。たとえば、設備のグレードに幅を持たせる、代替できる建材をあらかじめ確認しておく、予備費を多めに見ておく、といった方法です。
大切なのは、価格が上がった時にすべてを削るのではなく、どこを調整するかを先に考えておくことです。
コストを抑えるなら、どこから見直すべきですか?
まずは、後から変えやすい部分から見直すのがおすすめです。壁紙、照明、設備の細かなグレード、造作家具などは、暮らし始めてから変更できる場合があります。
一方で、構造、断熱、地震対策は完成後に変えにくい部分です。壁を壊したり、大きな工事が必要になったりすることがあります。
予算を調整する時は、「今しかできない工事か」「後からでも変えられるか」で分けて考えると判断しやすくなります。
制震ダンパーはナフサショックと直接関係がありますか?
制震ダンパーそのものが、ナフサショックを解決するわけではありません。また、製品によって使われている材料も異なるため、「制震ダンパーならナフサなどの供給不安の影響を受けない」とは言えません。
ただ、ナフサなどの供給不安で住宅資材の価格や納期が不安定になると、家を建てる時だけでなく、地震後に補修する時の費用や工期も読みにくくなる可能性があります。
そのため、建てる段階で揺れを抑える工夫を考えておくことは、長く住み続けるための判断材料になります。
制震ダンパーを入れれば地震被害はなくなりますか?
制震ダンパーを入れても、地震被害を完全になくすことはできません。
制震ダンパーは、建物に伝わる揺れのエネルギーを吸収し、揺れや損傷を抑えることを目指す装置です。地震の大きさ、建物の構造、地盤、設置位置などによって効果は変わります。
大切なのは、耐震性能を確保したうえで、揺れを抑える工夫として制震を検討することです。
新築でなくても制震ダンパーは入れられますか?
製品や建物の状態によっては、リフォームで制震ダンパーを入れられる場合があります。
ただし、すべての住宅に対応できるわけではありません。古い住宅では、まず耐震診断が必要になることもあります。また、壁の中に設置するため、工事できる場所や設置できる台数に制限が出る場合もあります。
リフォームで検討する場合は、制震ダンパーのメーカーや施工会社に、住宅の状態を見てもらうことが大切です。
FAQでは、価格や契約の不安だけでなく、どこを削り、どこを守るべきかを整理しておくことが大切です。
このセクションのまとめ
- 住宅価格への影響は、建材・設備・住宅会社によって変わる
- 急いで契約するより、価格変更や仕様変更の条件を確認したい
- コスト調整は、後から変えやすい部分から考える
- 制震ダンパーはナフサショックの解決策ではなく、地震後も住み続けやすい家を考えるための選択肢
- 新築だけでなく、条件によってはリフォームでも検討できる
まとめ:資材高騰時代こそ、家の「見えない性能」を削らない
ナフサショックによって、住宅資材や設備の価格、納期はこれまで以上に読みにくくなっています。家づくりを進める人にとっては、不安の多い状況です。
だからこそ、予算を見直す時は、削る順番を間違えないことが大切です。
内装や設備のグレードは、あとから変えられるものもあります。しかし、構造、断熱、地震対策のような見えない性能は、完成後に変えるほど大きな工事になりやすい部分です。
家は、建てた瞬間だけで終わるものではありません。地震が起きたあとも、できるだけ長く、安心して住み続けられることが大切です。
資材高騰の時代だからこそ、目先の価格だけでなく、地震後の補修費や暮らし続けやすさまで含めて考えてみてください。
耐震に加えて、揺れを抑える制震という選択肢を知っておくことは、これからの家づくりで大きな判断材料になります。
このセクションのまとめ
- 資材高騰時代は、予算の使い方を見直す必要がある
- 後から変えやすいものと、変えにくいものを分けて考える
- 構造、断熱、地震対策は、削る前に慎重に判断したい
- 制震ダンパーは、地震後も住み続けやすい家を考えるための選択肢
- 家づくりでは、初期費用だけでなく将来の補修費や安心感も大切にしたい



